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むらたけん online

(つづき)

みなさまは「デモ」という言葉をご存知でしょうか? デモンストレーションのこと? その通り。我々が展示会やお客様先などでよく行なうこのデモですが、ヨーロッパ圏の、特にディープな PCユーザーの間では、この言葉は全く違う響きを持って迎えられます。
"DEMO"... この言葉は、AMIGAという世界を知ってしまった人間にとって、それは甘美な、そして興奮極まる言葉なのです。

macで

ネットワークゲームに興じている間、「つわもの」は黙々とその PCのセットアップを始めました。最初に我々がおや?と思ったのがモニタでした。それは SONYのモニタだったのですが、15KHzをサポートするマルチスキャンモニタでした。15KHzを使う PCは洋モノ PCでは珍しく(日本ではぺけろく(X68000)や FM-TOWNSなどがあったが)、さすがビデオ処理に長けている PCだなとひとまず冷笑。当時、モニタは 31KHz以上でないと高解像度ではない=高級ではないというのが、macユーザーにはあったため、ここでいきなりこの PCに、ここにいる macユーザーたちは低俗 PCの烙印を押します。そして衝撃吸収のため、ザブトンにくるまれた中から出てきた PCは、なんとワンボックス PC。ここで macユーザーから歓声が上がります。幻の PCとはいえ、所詮、ワンボックス PC。なんだ、パピコンと一緒じゃん。こんなおもちゃ PCと我々の高貴な macを比べようとは、余りにも恐れ多い、と。誰もがこの時とばかりに優越感に浸ります。聞けばこの PC、10万円強で買えてしまうとのこと。ここに雁首そろえている連中はいずれも macに 30〜70はつぎ込んでいるので、「んじゃ、俺も一丁買ってみるか、安いし」と、ますます蔑みの気持ちを隠しません。ひどい連中。最後の晩餐は、かくして始まったのです。
PCのセットアップが終了し、OSが立ち上がると爆笑の渦。macの洗練された Finderをモドキにして、更にひどくしたようなインターフェースが 15KHzのモニタに登場したのです。おぉ、良く出来たおもちゃじゃん、パピコンにしては上出来だ。誰かが叫びます。私も心の中でうなずきます−「まぁ、この価格にしては上出来だ」。
「つわもの」は我々のヤジを背中に黙々と作業を続けます。我々 macユーザーには、その背中がこう語っているように聞こえました。「俺はこんな PCでがんばっているんだ、ちょっとくらいはほめてくれよー」、と。その背中はゴルゴダの丘に登るキリストのごとく、すべての苦難を背負っているかのように、見えなくもありませんでした。
そして取り出したのは、箱にぎっしりと詰まった FDの数々。そうだよな、やっぱりこの PCには FDがお似合いだ、macユーザーは MOディスクを振りかざしてなじります。恐ろしいことに、ここに集まった連中は全員が MOドライブを抱えてここにやってきていたのです(ぺけろくが現役な頃の MOドライブ、、、所有しているだけで、その人物のステータスは恐ろしく高い)。

しかし、

恐怖の大魔王は 1999年の 7の月よりも早く、猛々しく、我々 macユーザーの前にその姿をさらけ出したのです。
「つわもの」がその粗末な PCに FDをセットし、しばし沈黙すると、その 15KHzのモニタの向こうには、今まで我々が経験したことのない狂喜の世界の存在していたのです。CDクオリティでガンガンに鳴り響くステレオサウンドをバックに、何重にも重なりラスタースクロールするステージの上を、髪を振り乱したオネーチャンが狂ったように踊りまくる。巨大なキューブがモーフィングをしながら所狭しと転げまわり、爆発したかと思ったら血を流したニコニコマークが現れ、甲高い声で "Aciiiiid!"と叫びまくる。とにかくあらんばかりのテクニックを駆使したとんでもない動きをするプログラムが信じられない速度で目前に迫り来るのです。この信じられない PCを目の前に、その横に設置された高貴な mac様の存在は、160x120ピクセルのウインドウの中にチマチマと動く QuickTimeの悲しげ姿が、ただただ涙を誘うばかり。
そう、ゴルゴダの丘に登り、今、十字架に張り付けんとしたその時、我々は知ったのです。その人物が、実はゴルゴ13だったということを。一人、また一人と次々の脳天に一撃を食らっては踊り始め、いつしか当たりはモニタに合わせて乱舞を始める怪しげな集団が。あぁ、アルコールの勢いというものは恐ろしい。。。今をときめく Heaven's Gate真っ青のデジタル宗教が、今ここに始まったのです。
多少、脚色していますが、実際はこれにエアガン・マニアも登場し、かなり凄いことになるのですが、それはまた別の話 (c)三谷幸喜。



この FD1枚に収められたプログラミングの腕を競うデモは「メガデモ」と呼ばれ、特に欧州で活発にコンテストが繰り広げられている。この戦場は AT互換機にも存在し、Yahoo等で "megademo"「メガデモ」で検索すると引っかかる。AT互換機のデモもそこそこにスゴイが、それでも AMIGAほど強烈ではないことをここに付記する。その後、ここにいる macユーザーの大部分が AMIGAに手を染めたのは言うまでもない。私は高価な IIciの重圧により、仲間入りを果たせず今日に至る。




issue #40 / April 16, 1997




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