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Indian are surprised, too. |
インド人もビックリ
「インド人もビックリ」と人は言う。「インド人もビックリ」。なぜインド人なのか? それはさておき「インド人もビックリするかもしれないくらい、それはとてもスゴイことなのだ」という時に、この言葉はよく使われる。では、インド人をビックリさせるようなスゴイことってなんだ? 先日、それを少しだけ垣間見てきた。やっと「ムトゥ 踊るマハラジャ」を観ることが出来たからだ。
この映画、おそらく口コミでここまで広まったのだと思うが、とにかく平日だというのに、やたら混んでいる(というか満員で、立ち見もチラホラいた)。ティーンも多かったが、予想以上に中高年層も多いのだ。映画が終わって外に出たら、かなりの人が並んでいた。小さい映画館(*1)なので、立ち見も少なくないだろう。それでも、この映画には人を引きつける何かがあるのだ。
映画の国 インド
「インドの映画」と聞いて、人は何を想像するだろう? 私もかなり多くの映画を観てきたが、恥ずかしながらインド映画はこれが初めてだ。何より、日本に上陸するインド映画の絶対数そのものが非常に少ないからだ。ところが驚くなかれ、インドはなんと年間に 800本近い映画が作られる世界最大の映画生産国なのだ。というのも、インドは昔の日本のように娯楽が少なく、人々の一番の楽しみは映画だからだ。そして、この一般の人々が観る娯楽映画のことを「マサラ映画」という(「マサラ」とは料理に使うスパイスのこと。スパイスのように刺激的で、色々な物が混じり合っている様子を指すらしい)。そのマサラ・ムービーの1本が、この「ムトゥ 踊るマハラジャ」なのだ。
笑いあり 涙あり 感動あり 何でもあり
とにかくこの映画はスゴイ。何でも詰まっている。笑い、涙、愛、驚き、怒り、歌に踊り、アクション、エロティシズム、ダイナミズムなどなど、これでもかと言わんばかりに、ありとあらゆるものが詰まっている。上映時間は3時間近いのだが、ほとんどだれることなく、最後までパワフルに突き進んでいく。「タイタニック」の3時間もアッという間だったが、この映画もそれ以上にアッという間に時間が飛んでいく。
そして主演する人々がこれまたスゴイ。主役のスーパースター、ラジニカーント。とにかく濃い。知らない人から見れば、ただのヒゲオヤジにしか見えないが、この映画を観た後ではスーパースターという肩書きも納得なスゴイ人物である。
そしてヒロインのミーナ。人を魅了する大きな目と、肉感的なボディ、卓越した踊りの素晴らしさ、そしてその体から醸し出されるフェロモンは、観る者を虜にする。
悪役はどの人物も悪役にしか見えないし、善良な人は生まれてからずっとこんな顔をしてきたんだろうとしか思えない。どいつもこいつもハマリ役である。
観ないと損する
ハッキリ言ってしまおう。この映画は観ないと損する。上映される映画は数多いが、同じ金額を払ってこれだけのモノを魅せてくれる映画はザラにはない。というか他にない。映画をこういう尺度で語っていいのかは分からないが、少なくともコストパフォーマンスの高い映画であることは保証しよう(^_^;。
この映画を観た後、最初の「インド人もビックリ」という言葉を思い出した。そして、いかにインド人をビックリさせるのが大変なことなのかと言うことがよく分かった。それは決して並大抵なことではないのだ。だから、「インド人もビックリ」するということは、それはとてつもなくスゴイことなのだということが実感できた。
こういう映画をインド人だけに独り占めさせておくのは勿体ない。「恋する惑星」辺りから、香港映画が日本にドッと流れ込んできたが、それと同じように、この映画を皮切りに、インド映画が日本に数多く上陸することを心から願おうではないか。
*1 小さい映画館
渋谷シネマライズ:スペイン坂を登り切った、パルコの近くにある映画館で、その独特のセンスの上映映画の選択眼に業界から一目置かれている。スクリーンは2つあり、通常はどちらの作品も単館での上映となることが多い(つまり、日本ではこの映画館でしか上映されない)。
ティム・バートンの初期の名作「ビートルジュース」、明るくてブラックなドラッグムービー「トレインスポッティング」、ウォン・カーウァイの「ブエノスアイレス」など、ここで上映されて後に伝説となった映画も数多い。
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