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#1 - August 16th, 1998
 
Think yourself, Apple.


Appleの新製品、iMacが15日(米国)に販売を開始するが、その予約注文がこの1週間だけで 15万台にも達したそうだ。この風に乗ってか、長期に渡って低迷を続けていた Appleの株価は(Microsoftが Appleと提携した時から更に)持ち直し、株主を安堵させている。


iMac
http://www.apple.com /publishing /collateral /ama /0102 /images /imac.jpg


iMacのデザインは素晴らしい。PCとしてはこれまでになく斬新でスタイリッシュだ。Macintoshの最初の頃のデザイン −革命的なデザイン−は、今では著名なインダストリアルデザイン専門の会社、frogdesignが手がけた。暫定CEOとして返り咲いた Appleの創設者、Steve Jobsはこれまで(NeXT時代も含め)基本的には frogdesignにマシンのデザインを依頼していた。だから今回も frogdesignが新しい Macintoshをデザインするかと思っていた。実際、現在の Appleの広告を手がけるのは、あの伝説のCM、"1984" を作った広告会社、TBWA Chait/Dayだからだ。だから、Appleはこれら旧友と再び手を組み、あの輝かしい時代を取り戻そうとするのではないかと想像してしまうのは、過去の Appleを知る者としては無理からぬ話だ。

しかし、今回、Jobs復帰後の第一段とも言えるこの新製品は、イギリス生まれの Jonathan Iveという人物が陣頭指揮を取り、全てインハウスでデザインしたという。これまでの Jobsにはない、実にアグレッシブな判断だ − 普通の会社だとインハウスでマシンをデザインするのは極々一般的なのだが(事実、Jobsがいないときの Appleはそうだった)、しかし Jobsだからこそ、この判断はアグレッシブに思えるのだ。それは彼の意志を細部までに徹底的に浸透させるという意味において。

iMacは Appleが掲げるこれからの基本精神、"Think different."を、最初に具現化したマシンとして、後生に語り継がれるであろう。


そして、これは Appleの最後の伝説となるに違いない


こういうと、熱心な Macintoshユーザーは怒り心頭になる。「お前は macのなんたるかを知らない」、と。

誤解しないで欲しい。私は、今までずっと macユーザーだったし、これからも macユーザーとしてありたいと思う(ちなみに私は5年来の macユーザーで、Macintosh IIci、PowerMacintosh 8500/120を所有している)。しかし、今の Appleは根本から崩壊していっているような気がしてならない。例を挙げよう。


(1) Macintosh互換機のライセンシング停止
Appleが下した、これまでになく重要で重大な決断を、Jobsはいとも簡単に潰してしまった。Appleはハードウェアで苦しめられているにも関わらず、その目先の利益にしがみつくあまり、また苦渋の道へ逆戻りしてしまった。iMacは −これまでの Appleの新製品と同様に− 予約は順調だが、結局は生産が間に合わず、−これまでの Appleと同様に− 顧客の信用を潰すだろう。事実、PowerBook G3は品薄が続いており、「物があれば売れるのに」、「物がないから買えない」という、これまでの轍を再び踏んでいる。そして、予約した「新製品」がやっと手に入った次の日に、次の「新製品」が登場するのだ。

(2) サードパーティーへの支援体制不足
Microsoftは(良くも悪くも)そのマーケティング能力に関して言及されることが多いが、一方で開発者への支援体制にも凄まじく力を入れていることでも知られる。Appleにはこのような開発者支援に乏しく、一番重要であるサードパーティーを取り込むことに苦慮している(後述)。

(3) ソフトウェア開発力の低下
これが一番の問題だが、Appleは QuickTimeから先、ユーザーやデベロッパーが歓喜するようなソフトウェアの開発をしていない。MacOS 8は使いづらく、System7からインターフェースが改悪されているとしか思えない。OpenDocは開発停止が決まり、Cyberdogは帰る犬小屋を失った。OpenDocのコンポーネントを作っていたメーカーは Appleを見限り、次々と Windowsプラットフォームに逃げ出していった。rhapsodyは MacOS Xとなり、OPENSTEP、NEXTSTEPの動向に注視していたユーザーからは、ため息が漏れ始めている。QuickDrawGXや QuickDraw3Dは一体どこに行ってしまったのだろうか? 過去の Appleを今に残していた貴重な存在、Clarisは Appleに吸収され、ビジネスアプリを中心にサーバビジネスへシフトした、つまらぬデータベース会社だけが後に残った。


少し前までは、Macintoshには Macintoshでなければ動かないキラーアプリケーションが数多く存在した。Adobe Photoshop, Illustrator, Quark Xpress, Aldus PageMaker, MacroMind Director, MacPaint。Microsoftの Excelでさえも、最初の使いやすいバージョンは Macintoshにしか存在しなかった。しかし今はどうだろう? Bill Atkinsonが、Jobsに「そうしなければ会社を辞める」とまで言って、強引に Macintoshにバンドルさせた HyperCardですら、今はその亜流が、Windowsの世界には数多く存在する。そして、Macintoshのバンドル対象から、HyperCardは外されてしまった − もっとも Macintoshらしいソフトが、だ。

いったい、今の macの、どこが macなのだろうか? 私には左上の7色のリンゴマーク以外、何一つとして今の macからは macらしら、Appleらしさを感じない。昔は違った。たとえ、いくら莫大なお金を掛けて Microsoftが Appleの物真似をしようが、さらに 5年も 10年も先を行く Appleを、我々はそこに見いだせた。だから、macユーザーは、Windowsユーザーを鼻で笑えたし、Appleに安心してついていくことが出来たのだ。

iMacは、確かに他のPCと比べたら、"Different"だ。しかし、それが外観だけで、中身はつまらぬPCと "Same"であれば、一番 "Think different."しなければならないのは、当の Apple、そのものなのだ。


[参考]

Apple Computer
http://www.apple.com/

- iMac
 http://www.apple.com/imac/
- Sorry, no beige - Apple Media Arts (Interview with Jonathan Ive)
 http://www.apple.com /publishing /collateral /ama /0102 /imac.html
- Think different. (日本語サイト)
 http://thinkdifferent.apple.co.jp/


frogdesign
http://www.frogdesign.com/


TBWA Chiat/Day
http://www.chiatday.com/


むらたけんonline
issue #36 / December 25, 1996
 
 
 
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